あの夏を生きた君へ





日が暮れて、ばあちゃんは台所で夕飯の準備をしていた。


包丁で何かを切る音とか、コトコトと何かを煮込んでいる音がする。


そのうち、食欲を誘う良い匂いもしてきた。



あたしが思わず「お腹すいたぁ」と呟くと、ばあちゃんの「ふふふっ」という笑い声が返ってきた。





ばあちゃんが作る料理は決して手が込んでいるわけじゃないと思う。

でも、シンプルなばあちゃんの料理があたしは大好きだ。



テーブル、というよりはちゃぶ台、を囲んで二人で夕飯を食べる。

近所の精肉店で売っている好物のからあげを、ばあちゃんはゆっくり、ゆっくりと口に運んでいた。



あたしは久しぶりに、ばあちゃんが作っただし巻き卵とポテトサラダを食べた。

この2品はあたしにとって、ばあちゃんの料理の中でも1位と2位を争うエースなのだ。



「いいねぇ。たくさんあるから、たくさん食べなぁ。」


パクパクと頬張るあたしを見つめるばあちゃんの眼差しがあまりにも優しくて、急に照れ臭くなる。


そういえば、最近、ご飯を美味しいと思いながら食べてなかったかも…。







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