あの夏を生きた君へ
ばあちゃんの料理があたしに馴染むのは、あたしがばあちゃんの料理で育ってきたからだ。
小さい頃から親は共働きで、あたしはばあちゃんに育てられたようなものだと思っている。
親はウザくて煩くて文句も言いたくなるけど、ばあちゃんに言われると途端に素直をなってしまう。
あたしは、昔からばあちゃんっ子だった。
手を繋いで駄菓子屋に行ったり、怖い夢を見たら一緒に眠ってくれたり。
そうだ、
あたしが十円玉を飲み込んじゃった時も、もう真冬の夜だったのに背中におぶって病院まで走ってくれたっけ。
なぜだろう。
ばあちゃんとの思い出が、いくつもいくつも脳裏に浮かんでは消えていった。
久しぶりにばあちゃんの料理を食べているから懐かしくなったのかな。
「…ばあちゃん、あたし学校行ってないの。行きたくないの。」
ポツリと呟く。
ばあちゃんに、聞いてほしいと思った。
ばあちゃんになら、話せると思った。
あたしは、これまでのことを話した。