あの夏を生きた君へ
「千鶴って目力ハンパないよねー。」
「確かに!ってか睫毛超長くない!?」
「羨ましいー。」
似たような声のトーンで、似たような話し方をする美季たち。
そのテンポに乗り遅れまいと、あたしは三人の顔色ばかり窺っていた。
「そんなことないよー。昔っから目つき悪いとか言われるしー。
あたし、美季が羨ましい!だって超スタイル良いし、可愛いし!」
「だよねー。美季は女から見ても可愛いわっ!」
あたしの発言にナオミが同調して、美季は「そんなことないよー」と言いながらも、まんざらでもない顔をする。
少なくとも、あたしは、この派手な女子のグループで上手くやっていた。
周りに合わせて、周りの目を気にして、顔に笑顔を貼りつけて、
そうまでしてでも、あたしはあたしの居場所を守りたかったのだ。
「千鶴ってさぁ、成海くんと仲良いよね?」
「え…そんなことないよ、ただ幼なじみってだけで…。」
「マジで!?実はさぁ……。」
例えば、目立つ存在だった美季たちが地味なあたしに声をかけてきた理由が。
「彩織がねぇ、成海くんのこと気になってるのー。」
「…へぇーそうなんだ!」
「協力してくれるよね?」
そんなことだったとしても、あたしは縋りついていた。
薄っぺらい、見せかけだけの友情に。