あの夏を生きた君へ
灰色の空を眺めていると、
「クソッ!暑ぃ!」
という声が教室に飛び込んできた。
あたしは反射的に身を固くする。
声の主は高嶋、そしてその後ろには金魚のフンのような久保田も一緒だ。
「説教どうだった?」
と、草野が面白そうに問いかける。
「んぁ?エロ本没収されちった!」
そう答えたのは久保田。
高嶋はといえば、ムスッとしながら適当に近くにあった机に座る。
どうやら機嫌は最悪のようだ。
2年3組、独裁政権。
それを牛耳るクラス1の問題児・高嶋。
女子高生を妊娠させたとか、酔っ払い相手にケンカして半殺しにしたとか、不気味なウワサが付きまとうヤツ。
あたしは、ただ祈った。
不機嫌なヤツの怒りが火の粉となって自分に降り注がないことを。