あの夏を生きた君へ
美季たちは、高嶋たちと親しかった。
あたしへの嫌がらせは、高嶋たちによって始まった。
美季は自分の手を汚さない。
「睨んでる」、「目つき悪ぃ」、「ケンカ売ってる」。
お母さん似の切れ長の目は生まれつきだから、どうしようもない。
小さい頃から気にしてたコンプレックスを、高嶋たちは面白可笑しく笑った。
そのうち、「名前がダサい」とか、「ババァ」とか。
クラスの女子からも無視されて、あたしは一人ぼっちになっていた。
必死で作り上げたつもりでいた人間関係なんか、もうどこにもない。
悠、一人だけがあたしを庇い続けた。
でも、美季たちはそれが気に入らないんだ。
どう考えたって、悪循環。
嫌がらせは日に日にエスカレートしていった。
物を隠される、壊される。机の落書き。
給食には虫やゴミ。
イジメ…というべきかもしれない。
あたしは、でも、“イジメ”なんだと認めたくなかった。
認めたら、もう戻れない気がした。
「千鶴婆さんの汚ねぇ目を洗ってやってんだぜ!お礼は?」
「ウッ…ゴホ…っ…。」
「何とか言えよ!?あぁ?」
モップで顔面を掃除されたり、トイレの便器の中に顔を突っ込まれたりが日常になった。
「二人一組になってやってください」がお決まりの体育の授業では、あたしが恐れていた“余り者”になった。
そんなあたしを見て、美季たちは笑った。
愛美は黙って俯いていた。