あの夏を生きた君へ
「ばあちゃんは、いつだってちづの味方だよぉ?」
「ばあちゃん…。」
「ばあちゃんがちづくらいの歳の頃は、自由に物も言えない時代だったんだよ。
だからね、ちづは自分の気持ちにはいつも正直でいるんだよ?
人はね、生きてるだけでいいの。ばあちゃんみたいに長く生きたら、学校に行かないことなんかとるに足らないもんさ。」
そう言いながら、ばあちゃんは慣れた手つきで煙草に火をつける。
くゆり、と白い煙が舞い上がって、開け放った窓に向かって消えていった。
草木が風に揺れる音、蝉の鳴き声、虫たちの囁きが部屋の中まで届いていた。
鼻の奥がツンとする。
ばあちゃんの言葉はストレートすぎて泣いてしまいそうになる。
学校に行かなくてもいいと認めてもらえただけで、あたしは心底ホッとした。
「ばあちゃん…ありがとう。」
ばあちゃんは目を細めて笑った。
その笑顔は陽だまりみたいだった。
「…今日、ここに泊まっていってもいい?」
「もちろん。恵に電話しなきゃねぇ。」