あの夏を生きた君へ
「ちづ。」
「…ん?」
「ばあちゃんの青春は時代に奪われてしまったけど、ちづは大丈夫。
自由に青春を謳歌するんだよ?」
「…うん。」
その時、不意にばあちゃんが、
「あ!」
と、驚いたような声を出した。
心配になって見つめると、ばあちゃんは目を閉じたまま、口を「あ!」の形にして固まっていた。
不安に思って尋ねると、今度は一人で納得したみたいに笑いだす。
「二人で埋めたんだよねぇ、宝物を。」
「え?」
「もうどこに埋めたかも覚えてないけど、それぞれ自分の宝物を、二人で埋めたのさ。」
それは、つまりタイムカプセルってことなのかな。
「ばあちゃんは何を埋めたの?」
「んー…覚えてないんだよねぇ。あの頃は生きることに必死で忘れてたんだねぇ。」
ばあちゃんが初恋の人と埋めたタイムカプセル…。
あたしには、あまりにも壮大な話すぎてピンとこないけど、何だかスゴいことだなぁなんて思った。