あの夏を生きた君へ
「あの宝物はどこへ行ってしまったんだろうねぇ…。」
ばあちゃんが、まるで独り言みたいに呟く。
あたしは、見たこともないタイムカプセルを想像してみた。
ばあちゃんは何を埋めたんだろう。
ばあちゃんの初恋の人は?
「…ねぇ、その初恋の人の写真とかないの?」
「一枚だけね。」
ばあちゃんの初恋の人…どんな顔をしてるんだろう。
今度写真見せて、と言おうとしたら、もうばあちゃんは静かな寝息を立てて眠っていた。
ばあちゃんの横顔を見つめて微笑んでから、あたしも瞳を閉じた。
今度、ばあちゃんとまた昔の話をしよう。
ばあちゃんが若かった頃の話、あたしが小さかった頃の話も。
いつでも会えるし、また泊まりに行けばいい。
あたしは、そう思っていた。