あの夏を生きた君へ
それから、数日が経った。
日が暮れても気温が下がらない、うだるような暑さの夜だった。
突然、電話が鳴り響いた。
「はい、もしもし。桐谷でございます。」
お母さんが電話をとった時、あたしはリビングでテレビを見ていた。
「はい…えっ!?」
妙なお母さんの声を不思議に思い振り返る。
お母さんはさっきまでとは違う、焦っている様子で「はい」、「はい」と繰り返していた。
何だろう…?
やがて、お母さんは電話を置いた。
けれど、あたしに背を向けたまま動こうとはしなかった。
「お母さん?」
あたしの呼びかけに、お母さんはゆっくりと口を開いた。
「…お母さんが…倒れたって…。」
「…え?」
お母さんの“お母さん”は、つまりばあちゃんのことだ。
「…嘘……。」
ばあちゃんが倒れた――…?