あの夏を生きた君へ
怖気づいていた。
怖かった。
ばあちゃんに会うのが、なぜだかとても怖かった。
もたもたしているうちに、お父さんはすくっと立ち上がって、さっさと病室へ入っていってしまった。
あたしは慌てて追いかける。
病室の中は、廊下よりもよそよそしい感じがした。
ベッドの周りに親戚たちと、お母さん、お父さんが囲むようにして立っていた。
窓にはクリーム色のカーテンが掛かっている。
あたしは恐る恐るお母さんの隣まで歩いていった。
ベッドには、ばあちゃんが横たわっていた。
でも、数日前に見たばあちゃんの寝顔ではなかった。
顔は黄色っぽくなって、点滴につながれて眠っている。
水分が枯れはてたようなしわしわの手、細い腕。
痛々しかった。
ばあちゃんが急に小さくなったような気がした。
あたしは見てはいけないものを見てしまったような気持ちになって急いで目を逸らした。
ここにいるのは確かにばあちゃんなのに、ばあちゃんじゃないような。
少なくとも、あたしが知っているばあちゃんじゃなかった。