あの夏を生きた君へ





病室に漏れる啜り泣き、重苦しい空気と釣り合わない明るすぎる蛍光灯。




あたしは、ここにいたくなかった。


泣きだしてしまいそうな、可笑しな気持ちになっていた。



ふふふっと可愛く笑うばあちゃん、愛煙家のばあちゃん、少女のように照れながら恋バナを聞かせてくれたばあちゃんはどこに行ってしまったんだろう。


ばあちゃんとの思い出が溢れて、
それは止めようにも止められなくて、気を緩めたら本当に泣いてしまう。



泣く必要なんかないじゃないか。

ばあちゃんはここにいるんだから、悲しいことなんて何もない。


あたしは縋るように自分に言い聞かせた。





「長生きしてくれたものね。」


親戚の誰かが呟いた。


「あぁ、向こうでじいちゃんが待ってるさ。」




向こう?

じいちゃんは、もう随分前に死んでしまった。

向こうって…?




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