あの夏を生きた君へ
「お母さん。」
あたしは呆然としながら隣のお母さんに尋ねた。
「ばあちゃんって…どうなるの?」
お母さんは目に涙を浮かべながら、小さな声で言った。
「意識がね、戻らないのよ。もう、長くは…。」
そこで、お母さんは言葉に詰まって涙を零した。
……ばあちゃんは死ぬの?
嘘だ。
そんなの嘘だ。
ばあちゃんは死んだりなんかしない。
あたしは強く思った。
ばあちゃんは死んだりなんかしない。
人の死を目の当たりにしたことがないあたしは本気だった。
ばあちゃんは生きている。
きっと、もっとずっと長生きする。
だって、この間まであんなに元気だったじゃん。
きっと、軽く100歳は生きるって。
あたしは唇を噛んだ。
泣く必要なんかない。
悲しいことなんて何もないんだから。