あの夏を生きた君へ
目を開けて、あたしはばあちゃんが眠っているベッドに視線をやった。
けど、それよりも先に瞳に飛び込んできたのは見知らぬ背中だった。
ハッとした。
驚きで声も出せない。
まさか、人がいたなんて…。
その背中は大人のものではない。
多分、あたしと歳が変わらないくらいの、男の子の背中だった。
男の子は坊主頭だ。
殺風景な汚れた服を着ている。
それから、焦げ臭い匂い。
まるで何かが燃えたあとのような。
男の子を観察しながら、あたしには当然の疑問が湧いてきた。
彼は一体、何者なのか。
ばあちゃんの知り合い?まさか。
中学生くらいの男の子の知り合いなんているわけないじゃん。
彼は、あたしの気配と不躾な視線に気づいたのか、ゆっくりと振り返った。
目が合った瞬間、心臓がギュッと小さくなった気がした。
だって、あまりにも綺麗な目をしてたから。
キラキラしたガラス玉みたいだった。
坊主頭に似合わない繊細そうな顔をしているけど、こうして顔を見てみると年下のようにも見えた。
身長は悠と同じくらいだろうけど、何ていうか幼い感じだった。