あの夏を生きた君へ





「時間がないから」と休みなく動くお母さんは、今度は庭で家庭菜園の世話を始めた。



あたしは、縁側で寝転がって本の整理をしている。
さっき、お母さんから任された仕事だ。


ばあちゃんは愛煙家でもあり、読書家でもあった。


だから、この家にはたくさんの本がある。

分厚い推理小説から週刊誌まで様々で、
ばあちゃんは読まなくなった本も処分しない人だから大抵の本は埃を被っていたりする。



縁側に積み上げてみた本からは独特の匂いがした。

湿気を含んだカビ臭い匂い。


あたしは太陽の光の中で、本についた埃や煤なんかを払っていく。





ふと、チョコレート色の革の表紙の本を見つけて手が止まった。


重くて分厚い、大きな本だ。


興味本位で覗いてみると、家族の写真を収めたアルバムらしい。





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