あの夏を生きた君へ
「昔、お母さんも偶然この写真見つけてね。ばあちゃんに聞いたことがあったの。“この男の子誰?”って。」
「うん。」
「ばあちゃんの初恋の人なんだって。」
言葉に詰まった。
あたしは、もう返事すら上手に出来ない。
「幼なじみだったんだって。確か…この写真の時は今のちづと同じ14歳だったかな。
戦時中だったらしいから、ばあちゃんも大変だったろうね。」
ばあちゃんがしてくれた昔の話、病室で彼が言ってたこと。
鳥肌が立った。
それなら、彼がばあちゃんのことを“明子”なんて呼ぶのも納得がいく。
え…でも……ちょっと待って、それって…。
「60年以上も昔の写真、今も大事にしてたのね…。
この男の子、写真を撮ってからしばらくして亡くなったらしいから。形見みたいなものなのかもね。」
お母さんの声を聞きながら、胸の奥で酷く動揺していた。
それって、つまり…。
あたしが見た彼は、幽霊ってこと……?