あの夏を生きた君へ
暗い病院の中で不気味に浮かび上がる非常口の緑色の光。
今さらだけど、ここなら幽霊が出ても可笑しくはないと思う。
そして、これも今さらなんだけど、昨日も今日もとっくに面会時間なんて過ぎてるんじゃないだろうか。
あたしは細心の注意を払いながら、ひっそりと廊下を歩いた。
ばあちゃんの病室の前まで来ると、一度ゆっくりと深呼吸をする。
覚悟を決めなければならない。
だって、この扉の向こうにいるかもしれないアイツは、この世の人でない可能性絶大なんだから。
……正直に言えば怖い。
怖いけど、あたしはドキドキもしてる。
「明子とした約束を果たしにきた」、
その言葉の意味を知りたかった。
あたしは、意を決して病室の扉を開けた。