あの夏を生きた君へ
「ばあちゃんから聞いたことがある、アンタのこと。
幼なじみがいたって。一緒に宝物を埋めたって。
ばあちゃんが言ってた!自分が向こうへ行く時は迎えに来てくれないかなって!
…だから!…だから迎えに来たの!?」
次第に感情的になったあたしの声が病室に響く。
運動をしたあとみたいに息が荒く、
あたしは今にも泣いてしまいそうになるのを堪えていた。
「約束って…そういうこと!?迎えに来るってこと!?」
すっかり弱々しい声で尋ねるあたしに、彼は悲しそうな目を向ける。
「まだ…まだ連れていかないで!ばあちゃんを連れていかないでっ!!」
話したいことがたくさんある。
やりたいことがたくさんある。
教えてほしいこともたくさんあるの。
また、ばあちゃんの笑顔が見たい。
優しい声で名前を呼んでほしい。
だし巻き卵もポテトサラダも食べたいよ。
縁側で一緒にスイカ食べようよ。
やだよ、こんな終わり方。
まだ…まだ行かないでよ。
彼が幽霊だとしても、死神だとしても、ばあちゃんを連れていくなら許さない!