あの夏を生きた君へ
「…どうして守れなかったの?」
「…僕が死んでしまったから。」
何も言えなかった。
分かっていたはずのことなのに。
何も言えなかった。
「明子に見せてやりたいんだ。今度こそ…守りたいんだ。」
「…探してるの?宝物を。」
彼は黙って頷く。
「でも、無理かもしれないな。」
「…え?」
「どこに埋めたのか、肝心なことを覚えてないんだ。
それに…。」
「それに?」
「僕はこの世の物を触れない。」
そう言った彼の手は真っすぐあたしに伸びてくる。
思わず身構えた。
だけど、その手はあたしに触れることなく、まるで空気を掴むみたいにあたしの身体を通り抜けた。
「…本当に、幽霊なんだ。」
ってことは、タイムカプセルを見つけたところで触ることも出来ないんだ…。