あの夏を生きた君へ




「ちづ。僕は夜の間しかいられない。陽が昇れば、ちづにも見えなくなる。」


「…なに、それ?」


「朝、ちづが目覚めた時、僕はずっと近くにいたんだよ。」


廊下にも、病室にもいなかった。


あたしが…見えなくなっただけなのか…。



物に触れなくて、夜の間しか姿が見えない。

幽霊の世界も色々大変なんだ。






……彼はずっとずっと昔にばあちゃんとした約束を果たしにきた。

自分が死んじゃったせいで守れなかったから。


タイムカプセルを見つけて、ばあちゃんに見せたいんだ…。





ばあちゃんは…ばあちゃんは……。




あたしは、月に照らされたばあちゃんの顔をそっと見つめた。




ばあちゃんは、この人に恋をしていた。


ばあちゃんは、この人をずっと忘れなかった。

ばあちゃんにとって、すごく大切な人なんだ。


ばあちゃんは、今でも二人で撮った写真を大事にしてた。








ばあちゃんは…多分きっと……死んでしまう。










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