あの夏を生きた君へ
山の近くには渓谷があり、高所恐怖症の人なら卒倒するだろうと思われる高さの橋が架かっている。
橋を渡ると、この可愛らしい大きさの山へ続く遊歩道がある。
夏には涼しさを求めて、秋には紅葉の美しさを楽しみにやって来る観光客もけっこういるけど、
地元の人間なら、まず近づくことはない。
その理由は二つある。
一つは、橋が自殺の名所として超メジャーだから。
心霊スポットとしても、この辺りじゃ有名。
そして、もう一つの理由は……。
「この先はどうなってるんだ?」
「展望台があるだけ。遊歩道も、そこで終わり。」
「…可笑しいな。」
良く整備された遊歩道でも、片手にシャベル、片手に懐中電灯。
さらに、重いリュックサックを背負ってるから超しんどい。
リュックサックには、いざというとき必要になりそうな物を思いつく限り詰め込んできた。
果物ナイフとか、ライターとか、救急セットとか。
備えあればナントカだ。
でも……重い。
怠けた夏休みを過ごしていたあたしには、もはや拷問の域。
そのくらいキツい。
ついでにお腹すいた…。