あの夏を生きた君へ







この山に地元の人間が近づかない、もう一つの理由。

それは、古い言い伝えが関係している。




彼の言う神社、それは確かにある。


展望台から先、何の整備もされていない不気味な細い道の先にひっそりと佇む神社。


そこは大昔、お城だったという。

城には姫がいたというが、その姫が不審な死を遂げているという話がある。



神社の裏は草木が生い茂るばかりで、まるで樹海ようになっている。

そこに足を踏み入れたら最後。

神隠しに遭うという話まであるのだ。


最近でも、白骨化した死体が発見されたとか、首を吊った女の死体があった…なんて噂も。



それらは全て『姫の呪い』と言われていて、誰も寄りつかないのだ。






「…だから、そんなとこに埋めるなんてどうかしてるって言ってんの!しかも神社って……。」


座り込んだまま青ざめてるあたし。


けれど、なぜか彼は腹を抱えて笑いだす。





< 99 / 287 >

この作品をシェア

pagetop