そらぐみ

上野は教職員用の男子トイレの中で思考を巡らせた。


「あのとき、瀬野を見つめるみんなの表情がおかしかったような……。」


ボソボソと呟いて立ち上がり、トイレを後にした上野は再び職員室へ向かった。


「松本先生。」


不意に声をかけられた松本は肩をびくつかせ、大きく見開いた目を上野へ向けた。


「驚かせてしまってすいません。
ちょっとお聞きしたいことが……。」


上野がそう言うと、松本は何?とでも言うように首を傾げた。


「瀬野さんのことなんですけど……。」


上野が瀬野の名を口にした途端、松本の表情が変わった。

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