そらぐみ
驚きというより、不審なものを見るような目をした松本に上野は困惑した。
「瀬野さんがどうかしたんですか。」
いつもより低い、威圧的な声。
上野はそれ以上瀬野の名を口にしてはならないような気がして、何でもないと告げると職員室を後にした。
何なんだ、あの反応は。
瀬野の名を口にした途端の変貌ぶりは、普通じゃない……。
上野が歩きながら考えていると、いつも目で追っている後ろ姿を見つけた。
長いストレートの黒髪をなびかせ足早にどこかへ向かう瀬野。
そういえば、いつも昼休み教室にいない。
チャイムが鳴るギリギリに教室に入るのを何度か目撃していた。
上野はその後ろ姿を追いかけ、歩みを進めた。