そらぐみ

そのまま瀬野の腹に数発の膝蹴りを食らわせると、勢いよく机の群れの中に瀬野を突き飛ばした。

倒れ込んだ瀬野に追い討ちをかけるように蹴り続ける川井。

女子生徒たちは次々と暴行に加担していき、男子生徒はそれまでと変わらずそれぞれの時間を過ごしていた。


痛くない、痛くない。


瀬野は自己暗示のように、心の中で自分に言い聞かせる。

教室にいる人間はもちろん、教室の前を通る他のクラスの生徒や教師までもが、彼女たちの暴行を見て見ぬふり。

自分が耐え続ければいい。


チャイムが鳴りみんなが席に着く頃には、瀬野の目は虚ろで立ち上がることもできなくなっていた。

しかし誰一人として手を差し伸べるものはいない。

教室に入ってきた数学教師は後ろの隅の方に倒れ込んでいる瀬野から目を背け、何もなかったかのように授業を進めた。

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