そらぐみ
黒板と向き合う男の眼差しは、希望に満ちていた。
「うえ…の……そら……。」
口に出しながらチョークを滑らせる手つきはどこかぎこちなく、新人らしいとも言える。
それを生徒らは薄ら笑いを浮かべながら見つめていた。
――上野空
出来上がった文字を見て男は大きく呼吸をし、勢いよく振り返った。
「初めまして、上野空といいます。
今年度からこのクラスの副担任になりました。
新米教師なので至らないところもあるかと思いますが、精一杯がんばります。
これからよろしくお願いします。」
上野は軽く会釈をし、生徒全員の顔を見渡した。