Addict -中毒-
ワルい男
201X年 冬
今日、私は懐かしいひととすれ違った。
一年前に別れた年下のオトコ。
見慣れた彼の愛車のBMWのクラクションを鳴らされ、振り返った私に
彼は相変わらずの余裕の笑顔で軽く手を上げ、
窓越しに私に小さくウィンクを寄越してきた。
ちょっと笑い返して、同じようにウィンクを返す。
車が立ち去るまで
私はその行方から目を逸らした。
見上げると、空から綿菓子のような白い雪がふわりと舞っていた。
その白い雪は
芳しく妖しいまでの美しさを湛えた
あの月下美人の花弁に良く似ていた。
< 1 / 383 >