Addict -中毒-
私ったらいやね…ハンガーにかけないとしわになっちゃう。
なんて思いコートを引き寄せて、ちょっと目を開いた。
コートから私の香水に混じって、啓人の香水と…かすかなタバコの匂いが香ってきたからだ。
ドキリ
と心臓が大きく波打った。
蒼介はこの香りに気付いたんじゃ……
蒼介は私が愛煙家でないことを知っている。そしてもっと勘が良かったのなら、この香水がレディースでないことも
気付いたかもしれない。
私はコートを握りしめて、テーブルの上の茶色の小瓶に視線を移した。
白いテーブルの上に、月の光で反射してボトルの色が波を描いている。
その中に浮かぶ月下美人の影に―――
それでも強烈に私の中に入り込んでくる
あの若い男―――
啓人の顔が重なった。