Addict -中毒-
へぇ、そぉ。
私は気のない返事を返してコーヒーカップに口を付けた。
「でも相当なイケメンよぉ?あれはモテるわね」
ちょっと考え込むようにして、萌羽は整った顎に手をかけて首を捻った。
「御曹司でイケメンって。何でも揃ってるのね。遊んでそう」
「あ。そんな感じはしたわ。見るからに慣れてそうな感じだった」
「その彼と話したの?」
「挨拶だけね」
「あ、そうそう。彼は月香姉さんのことも知ってたわよ?」
「私?」
萌羽に言われて今度は私の方が首を捻った。
神流会長とはお会いしたことがあるけれど、息子は一度もなかった筈。
マダム・バタフライにも来店した記録は残っていない。
「噂話を聞きかじったんじゃない?」
「そうかな」と萌羽は納得の言ってない様子でカップに口をつける。
「そうよ」
私は興味がない素振りで返事で小さく返した。
本当に興味がなかった。
私とは住む世界の違う男。
そんな若い男が何故私のことを知ってるのか―――
疑問に思ったが、それはすぐに私の中から消えうせた。