Addict -中毒-
ブラックホール
**ブラックホール**
何もかも吸い込む渦のように、あの男に吸い寄せられる。
香りも体温も、気持ちも……全て。
―――――
リビングにはかすかに啓人が残した香りが漂っていた。
爽やかで、どこか男の色気を感じる香り。
ウェッジウッドのカップを重ねると、私は何事もなかったかのように平然と片付けをした。
「どうぞ」
「随分、あの外商員に気を許されてるんですね」
相澤が面白くなさそうに、ちょっと眉をひそめた。
「色々と懇意にしてくださる方だから」
「イロイロ…ね…」
含みのある返事が返ってきても、私はことさら何でもないように振舞った。