Addict -中毒-
啓人はにっこり微笑みを浮かべて、私の頭をそっと撫でる。
まるで恋人同士のようなその会話に、私は嬉しさ―――と言うよりもくすぐったさを覚えた。
「ありがと」ちょっと笑うと、
啓人は私の頭をちょっと引き寄せた。
彼の香りと私の香水が混じって、二人の間で不思議な香りを作り出していた。
キスされるような至近距離で彼は私を覗き込み、
「俺、紫利さんより年下だし得体の知れないとこあるかもしれないけど―――
あなたを守る力も、
あなたを寂しい想いをさせないだけの温もりも―――
俺にはある。
だからもっと俺を頼ってよ」
左右で色の違う真剣な瞳が私を捉える。
いつもなら透き通るような淡いグレーの瞳についつい目がいってしまうけれど、今回は右目の黒曜石のような瞳に釘付けだった。
吸い込まれそうな漆黒の瞳の奥底で、緩やかな光がゆらゆらと揺れていた。
だめ
この目を見たら―――すべて吸い込まれる。
道徳も、倫理も、常識もかなぐり捨てて、
彼にすがりたくなる。