Addict -中毒-
私はぎゅっと手を握り締めた。
指の付け根でリングの冷たい感触がした。
急に現実に戻った気がして―――急激に私の中の熱が冷えていった。
「今日は本当にありがとう。もう行って?」
啓人から顔を逸らして、彼の顔を見ないように―――私は玄関の扉の方に促した。
啓人は……
一瞬だけ悲しそうな…寂しそうな、複雑な表情を浮かべたものの、またいつもの調子に戻って、
「じゃ奥サマ。またのご利用をお待ちしております♪」
とチャラけて言って、笑顔で帰って行った。
――――残された私は……
まるで糸を切られたマリオネットのようにその場に崩れた。
もっと早く出逢いたかった。
デモ本気ニナッテハダメ
本当は私……寂しいのよ。
彼ハ遊ビ人
彼の言葉がどうしようもなく嬉しかった。
決シテ私ノモノニハナラナイ
私の中で二つの相反する気持ちが、まるで合わせ鏡のように存在して
どうしようもなく、苦しかった。
好き
スキ
だけど最後の言葉は
相反する意思の中で
綺麗に合致したのだ。
これが私の真実(ホントウ)の気持ち―――