Addict -中毒-


TRRR……


私の携帯がテーブルの上で鳴って、私は慌ててエプロンで手を拭くと携帯を手に取った。


着信を知らせるディスプレイを見て―――


私は携帯を持ったまま、その場で固まった。




着信:恵比寿バー





“恵比寿バー”とは啓人のことだ。


あからさまに本人の名前をいれるわけにはいかなかったから、思いつきで入力しただけ。


それは私たちが最初に出会った場所。






TRRR……



着信音は私の手の中で鳴り続ける。


ドキン、ドキン…


着信に呼応して、私の心臓が波打つ。


TRRR……


何で今頃……?


TRRR……


女が切れたのかしら…それともほんの気まぐれ?


TRRR……


私の中で様々な考えが浮かんでは消え、


何度目かの電子音が鳴ったところで




私は携帯の通話ボタンを押した。







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