Addict -中毒-
「―――……はい」
たっぷり時間を掛けて返事をしたのは、焦らすためじゃない。なんて電話に出ればいいのか悩んでいたから。
『……あ、紫利さん…俺……』
三週間ぶりに聞く彼の声は、どこかくぐもっていて元気がないようだった。
遠くの方で雨音がする。
外から掛けてきているのだろうか。
「どうしたの?」
『……うーん…ま、声が聞きたくなっちゃって……』
歯切れの悪いその答えに、釈然としない何かを感じた。
いつもの強引とも言える強気な口調は微塵も感じられない。
「どうしたのよ。あんたらしくないじゃない」
私は三週間のブランクをもろともしないように振舞ってことさら明るく言った。
だけど啓人は小さく笑みを漏らしただけだった。
『ねぇ。俺らしいってどういうの?俺ってどうゆう人間?』
雨の音に混じって、聞こえた声は弱々しく、
力を感じなかった。