Addict -中毒-
灰色の雨
**灰色の雨**
雨で滲む視界は灰色をしていた。
夜の東京に掛かる霞がかった雨の…現実離れした視界の中で、
でも彼の姿だけは妙にリアルに浮き上がっていた―――
――――
――
東京都写真美術館は、閉館時間だったらしく窓から明かりが消えていた。
出入り口の階段に、啓人は傘もささずに座り込んでいる。
階段に所々設置してある照明が、背の高い彼をぼんやりと映し出していたが、その背後に建つ高い建物のせいなのか、それとも―――
言い知れない何かを背負っている彼が小さく見えるのか……
雨模様の中に浮かんだ彼の姿は
頼りなげに、霞んで見えた。