Addict -中毒-
彼が微笑みながら先を促す。私はその手の先を見た。
茶色を基調とした年代を思わせる廊下が目の前に広がっている。
壁には印象派の絵画がかざってあり、アンティーク風の照明がぼんやりと足元を照らしていた。
私は彼の手を握り返し、再び脚を早めた。
――――
「―――……さん…姉さん!」
呼ばれて、私は、はっとなった。
目を開いて辺りを伺うと、出かけるときはまだほの明るかった空が夕暮れの紫色に染まっていたた。
窓の外を伺うと、まるで映画のセットのような…西洋のお城のような立派な門が聳え立っていて私は一瞬目を開いた。
「着いたわよ」
萌羽に言われて、私は慌ててバッグから財布を取り出した。
「支払いは済ませておいたわ。さ、行きましょう」
萌羽の申し出にちょっと驚きつつも、私はシートベルトを外した。
あれは夢―――……?それにしてはリアルな……
手のひらをじっと見つめて、そこにまだ啓人の温もりが残っているようで私は慌てて手を握り締めた。