Addict -中毒-
ターコイズブルー
**ターコイズブルー**
ターコイズ
それは12月の誕生石だ。彼の胸元で揺れていたロザリオで
その石が鈍い光を放っていた。
―――
カタン……
小さく音がして、私は、はっと目を開いた。
「ユエカ姉さん…?何してるんですか…」
震える声で現れたのは―――
アキヨだった。
私は目を開いて、そして慌てて啓人を押し戻した。
啓人の力強い腕は、思ったよりあっさりと引きはがれた。
香りが―――温もりが……
遠ざかっていく。
「アキヨ…」
気まずそうにアキヨを見ると、啓人がすかさず
「月香さんが転びそうになってたから支えていただけです」と間髪いれずに一言言った。
その顔に笑顔が浮かんでいる。
ユエカさん―――
私は彼にそう呼ばれたことがない。
その一言はすごく居心地が悪くて、聞きなれない異国の言葉を聞いているようだった。
言って欲しくなかった。
―――聞きたくなかった。