Addict -中毒-
「あの…神流さん。会長が探されてましたけれど」
アキヨが疑り深い目で私を見て、次いで啓人に笑顔を向ける。
「親父が?何だろ…」
「あちらですよ」
アキヨがにこにこして会場の中を促している。
啓人が会場に入っていくのを確認すると、アキヨはあからさまな敵視を私に向けてきた。
さっきまでの笑顔を拭い去り、まるで仮面を剝いだその顔は悪意と嫌悪に満ちていた。
「姉さん!酷いじゃない!!ジュニアはあたしたちが狙ってるって知ってたくせに!」
「彼とはなんともないわ」
私はことさら何でもないように言ったけれど、内心ではひやひやしていた。
アキヨはもしかしたら会話を聞いていたかもしれない。
「萌羽姉さんも可哀想よ!姉さんも狙ってたのに!!」
アキヨは私の言い訳を聞き入れようとしない。
さっきまで敵対していた萌羽のことを引っ張り出してきた。
女ってのは大変ね。立場によっては敵になったり、急に戦友のようになったり。
「あんたの勘違いよ。私にやましい気持ちはない」
言い切ったけれど、嘘に違いなかった。
「だったら何で二人きりになんてなるのよ!」
アキヨは敵意の篭った目を吊り上げて怒鳴り声を上げた。