Addict -中毒-
紫の君
**紫の君**
最古の恋物語で、同じ名前を持つ彼女は―――
死ぬまで、一番欲しかったものを手に入れることはなかった。
可哀想な女(ヒト)―――
―――
義母が入院して一週間経った。
私は毎日のように病室に顔を出し、義母の嫌味を笑顔で受け流し、義母の世話に明け暮れた。
蒼介も見舞いには来ている様だが、研究の空き時間に来るので、私と病室で顔を合わせることはない。
でも却ってそれが良かった。
義母はまだ蒼介に怒鳴られたことが効いているのか、彼に対しては妙によそよそしいことを義姉から教えられた。
そんな微妙な空気の中で気を遣うのは疲れる。
今は余計なことを考えたくない。だから義母の世話を焼いて、一時忘れたいの。
余計なこと―――
啓人から連絡がこないこと。