Addict -中毒-
赤い悪魔
**赤い悪魔**
彼は天使のような可愛らしい笑顔で笑った。
だけど悪魔のようなオトコ。
―――
彼と初めて言葉を交わした夜、家に戻ると私はリビングのソファに乱暴にバッグを投げ出した。
我知らず―――ため息がもれる。
照明を落とした暗い部屋に、うっすらと月の光が窓から差し込んで、白いカーペットを青白く染め上げていた。
年下の男に、いいように翻弄されて
バカみたい。
私はリビングボードの上の写真立てを見た。
蒼介と結婚式に撮った写真だ。
羽織袴を着てちょっと照れくさそうに顔を赤らめた蒼介と、その隣に白無垢を身にまとった私が笑顔で映っている。
写真たてのすぐ隣には、アンティーク風の薄茶の瓶が置いてある。
その瓶の中には焼酎が入っていて、その液体の中には月下美人の白くて大きな花がゆらゆらと浮かんでいた。
蒼介がくれた月下美人を焼酎漬けにしたのは私。