Addict -中毒-
青い鳥
**青い鳥**
青は、幸を呼ぶ色と言われており、忠実・信頼を象徴とされる色だ。
さらに花嫁の純潔や貞操、清らかさを表す。
もともと青色は古代、女性の慎ましやかさや誠実な心を象徴し、欧米では聖母マリアのシンボルカラーなのだ。
―――
ハンバーガーを食べ終わった後でも結局、「どこへ行く?」と悩む私たち。
「あんたが誘ったんでしょ。ちゃんとプランぐらい考えておきなさいな」
と言うか、この遊び人男はこの辺抜かりなく計画していそうなのに、今日ばかりは行き当たりばったりだ。
「どこ行きたい?」
向かい側で啓人が頬杖をついてにこにこ聞いてくる。
「その質問イヤ。年下だからって甘えるんじゃないわよ。しっかり女性をリードしなさいよ」
とちょっと意地悪く言って腕を組むと、
「そ?んじゃ俺の行きたいところで~♪」
ご機嫌に言って啓人が立ち上がった。
啓人の「行きたいところ」なんてたかが知れてる。どうせホテルだろう。
やっぱりこうなるのか。
高校生デートの何と短かったこと。明確な終わりを告げることなく、何となく流れで最終的にそこへ行き着いてしまうのは、
若さを失った証拠なのだろうか。
それでも私は大人しく啓人の車に乗り込んだ。
車は華やかな六本木の方へ向っている。
約400m続く六本木けやき坂通りを白と青のLED電飾で鮮やかに彩ってあって、車の中から見上げるその景色に目をまばたかせた。
そう言えば…もうすぐクリスマスだ。
毎年…特別にクリスマスを意識したことがなかった。マダム・バタフライではクリスマスのイベントも行われているが、お客様には日ごろの感謝を込めて少しだがクリスマスプレゼントを贈る程度。
蒼介とクリスマスを特別に過ごしたこともない。互いにプレゼントを交換しあったこともないし、七面鳥なんかのご馳走を食べることもない。
きっと今年もそう。
啓人は―――、一体誰と過ごすのだろう。
その隣に居るのが私ではないことは分かりきっているのに、私以外の女が隣に居るのを想像すると胸の奥がムカムカと不快感で満たされた。
その嫌な感覚を振り払うように、窓の外を見る。
街を歩くカップルはみんな腕を組んだり手を繋いだりでどこか幸せそうだった。
青白い光の波の中、カップルたちの幸せそうな笑顔だけが明るく浮かび上がっている。
それが何だか―――
私とは別の世界の光景に思えた。