Addict -中毒-
『こうやっておくと、いつまでももつのよ』
そう言って焼酎を見せると、蒼介は感心したように目を丸めていた。
その焼酎を飲むことなく、ずっと飾ってある。
『飲まないのかい?紫利ちゃん、好きだろう?』
『もったいないわ。蒼ちゃんがくれたものなんだもの』
そう言ってにっこり笑うと、蒼介ははにかんだように照れ笑いを浮かべた。
『ごめんね、気が利いた物をプレゼントできなくて。女の人に何をあげればいいのか分からなくて』
彼らしい。
それでも私はこの月下美人をプレゼントするにもかなり悩んだろう蒼介の姿を思い浮かべて、ちょっと可笑しくて、そして―――嬉しくなった。
こんなこと思ったら意地悪な女だと思われるかもしれないから、蒼介にはこのときの気持ちは内緒。
この月下美人を貰ってから二年半、この花はこの瓶の中でゆったりと時を過ごしている。
私はリビングボードの中から磨き込まれたバカラのグラスを取り出し、キッチンに行くと氷を入れた。その中に月下美人の焼酎を注ぎ入れる。
酔いたかった。
そしてすべてを忘れたかった。
あの胸を焼き尽くすような、恐ろしいほど甘美なひとときを。
焼酎を口に含むと、焼酎独特の辛さが喉を通る。
だけど私は忘れられない。