Addict -中毒-



To 恵比寿バー<K.K.TokyoNo4…@XXX> 20XX,12,19 00:48:32
 >>ごめん。クリスマスイブやっぱりいけない。


From 恵比寿バー<K.K.TokyoNo4…@XXX> 20XX,12,19 02:03:11
>>何で?


To 恵比寿バー<K.K.TokyoNo4…@XXX> 20XX,12,19 02:15:55
 >>旦那と一緒に過ごすことになったから。本当にごめん。



From 恵比寿バー<K.K.TokyoNo4…@XXX> 20XX,12,19 06:27:19
>>はよっす
  クリスマスはしょうがないべ?
  まぁ来れたら来てよ。席押さえたし

  今日も一日がんばろー




携帯を閉じてだだっ広いベッドで一人、私はため息をついた。


タイミングが悪い。


蒼介も啓人も揃って、どうして連絡が欲しいときはくれないくせに、こうゆう肝心なときにまるで競うように誘ってくるのかしら。


まぁ優先させる順位は比べるまでもなく、蒼介なんだけれど。


でも少しだけ……いいえ結構…残念だ。


“カレーシュ”と言うバーは聞いたことのない名前の店だった。


インターネットで調べてみると赤坂…虎の門駅の近くのビルの一室に店は位置していた。


この辺は他国の大使館がたくさん集まっていて、すぐ近くにナイジェリアの大使館が建っている。


割りと分かりやすい道だ。


店のホームページを見ると「Caleche」となっていて、なるほど“四輪馬車”の意味を持つ洒落た店の看板には、馬の蹄鉄が掲げられていた。



何となく……気になってその店に足を運んだ。昼間に行ったから灯りもついていなかったし、営業している様子はなかったけれど、夜になると賑やかになるんだろう。


ジャズの生演奏が聴けるらしい。


茶色いレンガ作りの壁もお洒落だった。



相変わらずセンスがいいと言うのか。



私何してるんだろう……


ホームページをプリントアウトした紙を片手にうろうろして。


当日来られないからって一人で来る?バカ丸出しの女だ。


場所が場所なだけに不審な動きをしていると、お巡りさんに職質を受けそうだし。


早々にその場を離れて大きな通りに出ると、まるで国の大きさを象徴するかのような立派で重圧的なこげ茶の建物……


アメリカ大使館の前に出た。



おなじみ鮮やかな赤と青の国旗が風ではためいている。




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