Addict -中毒-
グレーゾーン
**グレーゾーン**
黒でもない白でもない。
それが私たちの今の関係―――
―――
“行けなくてごめんなさい”
クリスマスイブ、午前0時を過ぎた辺りで私は啓人にメールを送った。
私を待っている可能性の方が低いのに、それでもこのまま何も言わずにフェイドアウトするのもどうかと思われた。
今頃は私の代わりに呼んだ女とジャズを聴きながら、アルコールのグラスを傾けて、ほろ酔いになった頃を見計らって、
彼女の手を取り、またどこかの高級なホテルに入っていくのだろう。
そんなことが容易に想像できた。
けれど不思議なことに―――嫉妬心はこれっぽっちも浮かんでこなかった。
今の自分がそれどころじゃない、と思いたいけどそれとはまた違う感情。
ただ―――私の中にある感情が―――
大切な何かが欠けてしまった。
その感情から生まれる様々な気持ちと―――もう前のように向き合えることができなかった。
そのメールに対して啓人からは返事がかえってこなかった。