Addict -中毒-
三が日があっと言う間に過ぎて、私は落ち着いた頃合を見計らい萌羽と啓人、二人に
“明けましておめでとうございます”
とたった一文、メールを送った。
随分とそっけないかもしれないが、
“本年もどうか宜しくお願い申し上げます”とは書けなかった。
From 恵比寿バー<K.K.TokyoNo4…@XXX> 20XX,01,05 21:45:16
>>おめでと~。今年もヨロシクね~☆
クリスマスイブに会えなかったと言うのに、啓人はまるで何事もなかったように普通だ。
相変わらず軽い。
やはり私が行けなかったことに、それほどダメージを受けていないようだ。
一方の萌羽からは一週間経ってもメールに返事がこなかった。
萌羽は私を裏切ったと思っているのかしら。
私が怒っていると―――思っているのだろうか。
あのティーラウンジを逃げるように立ち去った萌羽。あの頼りなげな細い背中を見送ったそれ以来…
彼女とは連絡すら取れてない。
どうしているのか気になって、一度マダムバタフライに電話を掛けてみたら
ママは『萌羽は去年の暮れからお休みとってるわよ。もう一週間になるかしら。体調不良みたい。
あの子、お正月は田舎に帰ってないみたいなんだけど、一人で大丈夫かしら。
月香あなた何か知らない?』
とちょっと心配そうに声のトーンを落として聞かれて、私は
「知らない」とだけ答えた。
萌羽―――…
萌羽は多少の体調不良でも、無理をしながらも欠かさず店に出勤していた。
そんな彼女が一週間も欠勤してるなんて、きっとはじめてのことで―――
何かあったのだろうか。