Addict -中毒-
有名大学の教授夫人と言う立場を捨てて、今まで築き上げてきたもの
プライドや倫理も―――何もかも捨てて
あなたと二人、イブの夜を四輪馬車で駆け抜けられたら
それはそれで
素敵ね。
夢みたいなことだけれど。
でも私はもうその夢さえ見ることを
忘れてしまった。
いいえ。最初からそれは夢だったのだ。
目が覚めたら
夢は消える―――
『じゃあ後で』
啓人は口だけでそう答えて、遠ざかっていった。
結局部屋番号を告げていかなかったけれど、私は聞かなくてもその番号が分かった。
1224
聖なる夜を表わすその数字が
彼の居る場所。