Addict -中毒-
そしてすぐに蒼介の元へ歩いていき、内科教授とやはり研究のことで会話を繰り出していた彼の背中を軽く叩いた。
「お話しを折って失礼します、あなた」
私は蒼介にの耳元で酔ったむねを話すと、蒼介も驚いたように目を開いて
「大丈夫かい?慣れない教授会だから疲れたのかな」と小声で返してきた。
「大丈夫よ、少し休めば元通りになるわ。少し失礼してもよろしいかしら?」ひそひそ小声で喋りながら出入り口を目配せすると蒼介は
「もちろん、僕も行くよ」と頷いた。
「いいえ、あなたはここに居て。二人抜けたら良くないわ」
そのやり取りを産婦人科教授が見ていたことに気付いていたけれど、私はその視線に気付かない振りをして
会場を出た。
エレベーターホールでエレベーターを待つ。
空のエレベーターの扉が開き、私は乗り込むことなく“閉”ボタンを押した。
一機見送って、また一機。
そうこうしているうちに産婦人科教授が
案の定―――
私のあとを追って来るように小走りで来た。
私はもっともらしく口元を押さえ、エレベーターの昇降ランプを頼りなげな視線で見つめる。
「藤枝さん、大丈夫ですか?」
産婦人科教授がさも心配そうに私の隣に歩み寄ってきて、私はハンカチで口元を押さえたままゆっくりと産婦人科教授を見た。
「……まぁ、心配してくださったんですか?わたくしの為に抜け出てくださったなんて
申し訳ございません」
ハンカチで口元を押さえたまま私は仰々しく腰を折った。
「いえいえ、具合の悪いご夫人を放ってはおけませんよ」
と教授がにこやかに笑う。
その笑顔と言う仮面の下に
下心を隠して―――
私は100%の確率で、確信してましたわよ?
あなたが私を追って来ると言うことを―――