Addict -中毒-
私は近くのソファに腰を降ろすと脚を組んだ。
わざとそっけない態度で、最後の最後までこの生意気な年下のオトコに
いっときでも溺れていたと思われたくなかったから。
この歳若い恋人に本気になったと思われたくなかった。
「理由は簡単よ。もう飽きたの」
私の冷たい一言にも啓人は動じることはなく
「ふーん」喉の奥で低く答えて、再びロックグラスに口を付ける。
くっきりとした喉仏を上下させて一口液体を飲み込むと、
体を反転させて、啓人はベッドの上でタバコを吸いだした。
「紫利さんて男みたいだな。ヤったら冷めるタイプ?」
「なんとでも言って?あなたとはもう会わない」
「旦那に悪いと思ってんの?」
啓人は私の言葉をさらりと流しながら長々と煙を吐く。
蒼介とのことは啓人には言っていない。
啓人の重荷になりたくない。
煩わしい女だと―――思われたくない。
「そうじゃないわ。新しいおもちゃを見つけたの。
あんたは不要ってことよ」
ことさら冷たくて酷い女に聞こえるよう、声を低めた。