Addict -中毒-
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バサッ…
物音がして、私は眠い目をこじ開けた。
ふわふわの羽毛布団からちょっとだけ顔を出すと、
啓人が窓の外を眺めながら、白いワイシャツに腕を通していた。
無駄な脂肪がない綺麗な筋肉がついたむき出しの肩や二の腕。
その腕に清潔そうなワイシャツを羽織っている最中だ。
私はその後姿を見るのが好き。
すごくセクシーだもの。
服に着替えるとき、習慣なのか、癖なのか彼は窓の外を眺めながら衣服を身にまとっていく。
ここは高層ホテルの一室。地上から45階の眺めはさぞや見ものだろう。
と言うものの、私は一度もここからの景色をゆっくりと眺めたことがない。
啓人は、45階からの景色を
まるで自分の目に焼き付けるように、じっと見下ろしながら着替えをする。
一度聞いたことがある。
何故、景色を見ながら着替えをするのかを。
すると彼はこう答えた。
「広大な景色を眺めてるとさ、何でも手に入れられる気がしない?」
無邪気な少年のような笑顔を湛えて、彼はそう答えた。
彼らしい答えだった。