Addict -中毒-
今、そのことを振り返る。
そして、こう聞きたい。
あなたはその世界を手に入れられたの―――?と……
―――私と彼との出逢いは一年前に遡る。
この頃の私は大抵何かにイラついていたし、退屈もしていた。
そして
寂しかったの。
恵比寿ガーデンプレイスの手前にある高級高層ホテルの最上階のバー。
週に一回、毎週金曜日に私は一人でこのバーを訪れる。
連れは要らない。男も要らない。会話も要らない―――
ただ黙って―――カクテルを飲むの。
それが私にとって至福のとき。
そして名前も知らない彼も、ほとんど金曜日に現われる。