Addict -中毒-
「お待たせいたしました。シャンディーガフです」
バーテンが私の前に長細いグラスを置いた。
「どうも」ちょっと笑顔でバーテンを見上げると、彼はカウンターの中で涼しく笑った。
一口、二口……
ゆっくりと味を楽しむかのように、液体を舌で転がして、液体が少し温まってから喉を潤すように飲み込む。
グラスを置くと、視線を感じた。
―――強い視線。
ほんのちょっとだけ右を向くと、名前も知らない若い男が、カウンターテーブルに優雅に頬杖をつき、こちらを見ながらちょっと笑みを浮かべていた。
すぐ隣に、彼が連れ歩く女が居るってのに、
彼の視線の矛先は
いつも私だった。
薄い唇…と言っても、ちっとも軽薄そうには見えない色っぽい唇の口角をちょっと上げて
挑発的に、笑みを湛えている。
私はそ知らぬ顔をして、再びグラスを傾けた。
そんなやり取りをもう三ヶ月ほど続けている。
言葉のない、大人の駆け引き―――にしては、随分一方的な気がしたけれど、
私は彼に見つめられる度に、何故か心臓の鼓動が早まるのを感じている。